介護の言葉づかい|敬語?タメ口?利用者さんへの声かけの考え方
介護現場で、利用者さんへの言葉づかいに
「これでいいのかな?」と迷うことはありませんか?
- 他の職員の言葉づかいが気になる
- 砕けた言葉は使っていいの?
- 敬語で話すと堅苦しい?
人によって意見が違い、正解が分からなくなることもありますよね。
実は、利用者さんへの言葉づかいには
「これが絶対の正解」というものはありません。
なぜなら、介護のコミュニケーションでは
敬語でも、少し砕けた言葉でも、
どちらも正解になり得るからです。
私は特別養護老人ホームで介護福祉士として20年間働き、
何度も失敗し、悩み、利用者さんに教えてもらいながら
コミュニケーションについて学んできました。
この記事では
介護現場で迷いやすい言葉づかいを、利用者さん目線で見直すヒント
を、やさしく・わかりやすくまとめています。
この記事を読むと
「言葉づかいで気をつけるポイントが分かる」
「利用者さんに合わせて言葉づかいを変える視点が身につく」
そんな変化が自然に生まれます。
結論として、
介護現場での言葉づかいは
「利用者さんにとって心地よいか」
を基準に考えることが大切です。
利用者さん一人ひとりに合わせて言葉づかいを考え、
自分の価値観だけで決めつけないことが、
安心できる関係づくりの第一歩になります。
介護の「言葉づかい問題」は永遠のテーマ

介護現場には、
「いつも敬語で話す職員」
「家族のように砕けて話す職員」
この両方のタイプがいます。
そのため、他の職員の言葉づかいに違和感を感じる人もいると思います。
介護職員として20年間現場に立ち続けてきましたが、
介護の言葉づかいの問題は、今も昔も変わらないテーマです。
利用者さんへの言葉づかいは敬語が基本
なぜ介護現場では「敬語が基本」とされるのでしょうか。
それは、次のような理由があるからです。
- 利用者さんの尊厳や自尊心を守るため
- 安心と信頼関係をつくるため
- 介護職員としての最低限のマナー
- 施設全体の印象や雰囲気を保つため
これらはすべて、
安心して関われる関係の土台になります。
▶︎ 介護で信頼関係を築く第一歩は「安心」|新人職員・実習生が知るべき基本
この距離感が崩れると、
「下に見られている」
「態度が悪い」
と感じさせてしまい、
トラブルにつながる原因になることもあります。
ご家族さんも介護職員の言葉づかいを見ている
介護施設に寄せられる苦情の中には、
「職員の接遇・態度・言葉づかい」 に関する内容が多く含まれています。
各自治体が公表している介護サービスの相談・苦情データからも、
言葉づかいや態度への不満が、実際のクレームとして数多く報告されていることが分かります。
※以下は、複数の自治体が公表している介護サービス相談統計をもとに、
苦情内容の傾向を紹介する目的で引用しています。
地域ごとの良し悪しを比較するものではありません。
苦情内容では、
『職員の接遇(態度・言葉づかい)』が26%で最も多く、
『ケア(入浴・食事・介助など)』(16%)を大きく上回る結果となっています。
『宮城県元年度 福祉サービスに関する苦情解決体制の実施状況等調査 報告書』
報告書の苦情事例には、
『職員の言葉づかいや態度が悪い』
『言葉づかい、対応の仕方が気になる』
といった声が複数掲載されており、
接遇や言葉づかいへの不満が、現場の具体的なクレームとして表れていることが分かります。
「令和4年度福祉サービス苦情解決事業 アンケート調査報告書」
岩手県福祉サービス運営適正化委員会(令和5年)
接遇や言葉づかいは、現場の印象だけでなく
「実際に苦情につながる重要なテーマ」 であることが分かります。
砕けた言葉や「あだ名」が合う利用者さんもいる
介護の言葉づかいは、敬語かタメ口かで悩む職員がとても多いテーマです。
すべての利用者さんに、
常に敬語だけが正解とは限りません。
一部の利用者さんには、
少し砕けた言葉づかいや特定の呼び名(あだ名)のほうが
反応が良い場合もあります。
- 特定の呼び名や言葉づかいのほうが笑顔が増える方
- 職員に家族のような親しみを感じてくれている方
- 長年の関係性ができている方
このようなケースでは、
言葉を少し柔らかくすることで
より良い関係が築けることもあります。
ただし、注意点があります。
砕けていいのは「言葉」だけです。
敬意まで砕けてはいけません。
言葉づかいにはそれぞれの価値観がある
当時、私が働いていた施設でも、
利用者さんへの言葉づかいはよく話題に上がり、
職員の間でも意見が分かれていました。
それぞれ考えがあっての言葉づかいだと思いますが、
他の職員には理解されないこともあります。
例えば、こんな声がありました。
あの職員さん、利用者さんに好かれてるけど、
タメ口が気になる…
敬語は堅苦しいよ。
ここは「利用者さんの家」なんだから。
あなたはどのような言葉づかいをされたいですか?

以前、私が施設内で主催した
「言葉づかいの研修」で、
『もし自分が介護施設に入所するとしたら、
どのような言葉づかい・対応をしてほしいですか?』
という匿名アンケートを取りました。
- 親しく話してほしい
- 家族みたいに接してほしい
- 敬語で話してほしい
- 馴れ馴れしい言葉は嫌だ
- 優しい言葉がいい
- 怒らないでほしい
- 否定しないでほしい
- お客様ということを忘れないでほしい
中には「施設に入りたくない」
という、質問から少しズレた意見もありました。
実際の利用者さんも、
同じ気持ちを抱えている方がいるかもしれません。
そう考えると、
職員が家族のように思えない方がいても
まったく不思議ではありませんよね。
介護施設での言葉づかいの正解は?
アンケートであがった意見は、
敬語派・砕けた言葉派がほぼ半々でした。
研修では、その結果を見ながら
利用者さんへの言葉づかいについて話し合いました。
「みごとに意見がバラバラ…」
「敬語は冷たい感じがして苦手」
「自分の親が若い職員さんにタメ口で話されていたら悲しい」
さまざまな意見があり、
「言葉づかいに正解はない」という
貴重な気づきにつながりました。
つまり、
「全員の意見が正解であり、
全員の意見が間違いでもある」
ということです。
大切なのは
「その人に合った言葉づかい」です。
利用者さん一人ひとりに合わせて
言葉づかいを変えることが大切です。
職員の価値観を
利用者さんに押しつけてはいけません。
言葉づかいは利用者さん一人ひとりに合わせて判断する

利用者さんに合う言葉づかいは、
どのように判断すればよいのでしょうか?
一つの目安は、
敬語を少し崩したほうが利用者さんの反応が良いときです。
例えば、
- 砕けた言葉のほうが表情が明るくなる
- 昔のあだ名で呼ぶと喜ばれる
- 「お母さん」「お父さん」と呼ぶと反応してくれる
このような場合です。
何度か様子を見ながら、
少しずつ試してみてください。
ただし、自分の価値観を押しつけないことも大切です。
職員一人で判断せず、
チームで共有しながら判断することも意識しましょう。
必要であれば、
ご家族にも相談・報告をしてください。
▶︎ 利用者さんの「気持ち」や「体調」に気づくための観察のポイントは、
こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
介護現場での利用者さんへの言葉づかいは、
利用者さん一人ひとりに合わせて変えることが大切です。
介護職員が「どう話したいか」ではなく、
利用者さんが「どう話してほしいか」を考えてみましょう。
利用者さんを一括りにして、
職員の価値観を押しつけていませんか?
一度立ち止まって考えるだけで、
利用者さんとの関係もやわらぎ、
介護のコミュニケーションも少し楽になります。

